今週まで、このゲームの路線はすべて日本のものでした。そしてその前提は、いつのまにかコードの奥まで入り込んでいました。駅には漢字表記・かな読み・ローマ字表記が必ずなければならない。入力対象はかなからしか導けない。路線がどの都市のものかは保存すらされておらず、事業者名から推測し、判別できなければ東京と見なす——そういう作りでした。
ロンドン地下鉄の前では、そのどれも成り立ちません。Paddington は Paddington です。変換すべき読みはなく、転写すべきものもなく、しかも東京から9,000km離れています。
つまりロンドンの追加は、実際には2つの作業でした。まずモデルを都市に依存しない形にすること、そのうえで路線を足すこと。
ロンドンを打つ
新しい英語入力モードがやることは至って単純です。駅名をそのまま、一文字ずつ打つ。考えどころは記号のほうでした。
実在の駅名をいくつか見てください——King's Cross St. Pancras、Hammersmith & City、Shepherd's Bush、Heathrow Terminals 2 & 3。どれにも、押しにくいか、キーボードによって出る字形が違うか、そもそも元データ上で表記が揺れる文字が含まれています。「St.」なのか「St」なのか。手元のスマートフォンが出すアポストロフィは直線ですか、それとも曲線ですか。
そのどれも、このゲームが試したいことではありません。そこでルールはこうなりました。
- **アポストロフィ・ハイフン・省略のピリオドは入力してもしなくてもよい。**どちらも正解として扱い、曲線の
'は直線の'に丸めます。 - **
&は "and" と入力する。**そう読むからであり、単に飛ばすとリズムがあるべき位置に空白が2つ続いてしまうためです。 - ハイフンの位置ではスペースも受け付ける。
- **大文字小文字は区別しない。**固有名詞のたびにShiftを押していては打鍵数が倍になり、日本路線とのCPM比較が成り立たなくなります。
一方でスペースと数字は入力します。複数語からなる駅名のリズムそのものであり、ラテン文字のタイピングテストならどれもそう数えます。
なぜこの3路線なのか
ロンドン地下鉄は11路線あります。今回追加したのは3つで、選定は恣意的ではありません。
データモデルには「支線」という概念がありません——路線は順序づけられた駅のリスト1本きりです。この時点で、セントラル線、ノーザン線、ピカデリー線、ディストリクト線、メトロポリタン線は対象外になります。残るのはヴィクトリア、ジュビリー、ベーカールー、ハマースミス&シティ、ウォータールー&シティ。
このうち、ヴィクトリア・ジュビリー・ベーカールーは互いに乗り換えられます。オックスフォード・サーカスがベーカールーとヴィクトリアを、ベイカー・ストリートとウォータールーがベーカールーとジュビリーを、グリーンパークがヴィクトリアとジュビリーを結びます。68駅のうち4駅が共有されているということは、経路検索が初日から本物の乗換経路を見つけられるということです。2路線だけ、あるいは互いに交わらない3路線では、検索する対象そのものがありません。
ハマースミス&シティ線はサークル線・ディストリクト線とほぼ同じ経路を走りますが、そのどちらもまだ収録されていないため、単独で入れても乗換先のない一本の帯になってしまいます。ウォータールー&シティ線は2駅です。それは1ゲームになりません。
サークル線は?
いちばん欲しくなる路線でしょう——山手線と同じ、環状線です。そして今はまだ追加できない路線でもあります。
2009年12月以降、サークル線は環ではありません。螺旋として運行されています。ハマースミスからパディントンへ、環を一周して、エッジウェア・ロードへ抜ける。つまり同一経路上にエッジウェア・ロードが2回現れるのです。駅IDを一意にするだけなら簡単ですが、経路検索は物理的な駅を駅名で同一視しています——ベーカールー線とジュビリー線がベイカー・ストリートで交わると判断できるのは、まさにその仕組みのおかげです。エッジウェア・ロードという同名の停車地が2つあれば、それらは1つのノードに潰れ、環を横断するコストゼロの近道が生まれてしまいます。
これを直すには、駅名とは別に物理的な駅の同一性を持たせる必要があります。変更範囲は限定的ですし、ディストリクト線・メトロポリタン線にも同じ仕組みが要ります。ただ、今回のリリースには含まれません。
土地の顔
ロンドンの路線は東京と同じようには描かれません。駅名標に出るのは描き起こしたラウンデルで、ロンドン地下鉄が一度も使ったことのない「アルファベット+数字」のタイルではありません。そして運賃ゾーンが表示されます——日本には対応物のない概念です。
駅名標の下端の帯は、これまで「つぎは」と直書きされていました。インターフェースの言語が何であっても、です。今はそれが都市から決まるようになり、ロンドンの駅名標には "Next station" と出ます。これは意図的に両方向へ効きます。英語表示で東京の路線を遊んでも、駅名標にはやはり「つぎは」と出る——実在の駅名標の複製であり、実在の標識はそれが立っている土地の言葉で書かれているからです。
路線図にも手が要りました。日本語の駅名は2〜4文字幅なので、ラベルを線の片側に揃えても衝突しません。"King's Cross St. Pancras" は「新宿」のおよそ6倍の幅があります。ラテン文字の路線では、ラベルを左右交互に振り分けるようにしました。これで片側あたりの余白が倍になります。
この先
物理的な駅の同一性が入れば支線のある路線が可能になり、ロンドンの路線はさらに増やせます。そしてモデルが「日本の形」ではなく都市に中立な形になった今、その次の都市をどうするかという問いは、今回よりずっと小さな問題です。
