札幌が仲間入りしました。加わったのは南北線(16駅・麻生—真駒内)、東西線(19駅・宮の沢—新さっぽろ)、東豊線(14駅・栄町—福住)——札幌市営地下鉄の全線です。これで収録は61路線となり、東京・大阪・京都・ロンドンに続く5番目の都市が加わりました。三線あわせて48.0km、乗換駅の重複を除いて46駅。1日およそ63万人が乗る、三大都市圏の外では最大の地下鉄です。
ゴムタイヤと、一本の案内軌条
札幌の地下鉄には、ふつうの意味でのレールがない。車両はゴムタイヤで平らな走行面を走り、軌道の中央に一本だけ通された案内軌条を、左右から案内輪で挟んで進む。本格的なゴムタイヤ+中央案内軌条方式としては世界初で、そのまま札幌方式と呼ばれている。着想はパリのメトロ——ただしパリは走行面の外側に二本の案内軌条を置く。それを真ん中の一本に裏返したところが、この名前の由来だ。
ゴムを選んだ理由は駅間距離だった。当初は路面電車並み、300m前後の駅間が想定されており、ゴムは鉄より格段に食いつくので加速も制動も勾配も強く、そのうえ静かだ。雪が決めたのはその外側である。札幌の降雪量は平年で年479cm、人口百万を超える都市としては世界一の雪国だとよく言われ、だからこそ路線はほぼ全線が地下に押し込まれた。1971年12月、翌年2月の冬季五輪を目前に開業したこの地下鉄で、唯一地上に出る南北線の高架——平岸のすぐ南から真駒内までの4.5km——も、全長がシェルターですっぽり覆われている。地下鉄そのものは雪に一切触れない、というのが交通局の言い分である。
大通で交わり、さっぽろでは交わらない
三線が顔を合わせるのは大通ただ一か所(N07/T09/H08)。地下1階のコンコースの下に南北線、そのさらに下に東西線、一区画東の地下4階に東豊線という縦長の構造で、乗り換えはすべて改札内で済む。
ややこしいのは一駅北のさっぽろだ。南北線と東豊線はそもそも別の区画にあり、2017年から両線の乗り換えは改札外——いったん外へ出て、30分以内に入り直す方式になっている。おかげで妙な方向の縛りが生まれた。南北線の麻生方面と東豊線の栄町方面はさっぽろでしか、南北線の真駒内方面と東豊線の福住方面は大通でしか乗り換えられない。地元の人は、これを考えずに体で覚えている。
「さっぽろ」がひらがなな理由
地下鉄の駅名はさっぽろであり、新さっぽろである。どちらもひらがな。すぐ隣にJRの札幌と新札幌があるからで、取り違えを避けるためだと交通局自身が説明している。
面白いのは、この規則が必要なところにしか使われていないことだ。地下鉄には白石も琴似もあり、どちらもJRに同名の駅がある。それでも漢字のまま。JRの同名駅からは離れていて、そもそも間違えようがないからだ。表記が駅同士の距離を記録している、というわけである。
打ってみると
- 北の数字は数列ではない。 北34条は「きたさんじゅうよじょう」、北24条は「きたにじゅうよじょう」。ところが次の北18条は「きたじゅうはちじょう」。指が覚えた流れが一駅で裏切られる。
- 南郷の三連続。 南郷7丁目(なんごうななちょうめ)、南郷13丁目(なんごうじゅうさんちょうめ)、南郷18丁目(なんごうじゅうはっちょうめ)。前後が同じで真ん中だけが違う三駅が、東西線の終盤に並んで現れる。
- 二十四軒は「にじゅうよんけん」。 北24条の「にじゅうよ」と同じ数字なのに、読みが違う。同じ路線にはバスセンター前(ばすせんたーまえ)もあり、漢字ばかりの並びに突然カタカナと長音符が挟まる。
- 東豊線は「ひがし」が積み上がる。 環状通東(かんじょうどおりひがし)、東区役所前(ひがしくやくしょまえ)、北13条東(きたじゅうさんじょうひがし)。三つのうち二つは末尾に付き、東区役所前だけが頭に付く。その一駅で指が迷う。
- 豊水すすきの。 読みは「ほうすいすすきの」で、南北線のすすきのとは別の駅、しかも乗換駅ではない。「すすきの」のつもりで打ち始めると、先頭の四拍がまるごと足りない。
どれから始めるか
数字の駅名で試されたいなら南北線、いちばん長くて南郷の三連続が待つ東西線、14駅と短く「ひがし」を連打させられる東豊線。全駅一覧・乗換・打鍵プロファイルは南北線・東西線・東豊線の各ページに、路線図は路線図コレクションにある。
東京と大阪を打ち終えた人なら、三線で一晩の仕事。これから札幌へ行く人には、改札の上に並ぶ名前を先に手になじませておく、いちばん早い方法だ。
